2018年11月29日 木曜日
小規模宅地等についての相続税の課税の特例の見直しについて
当事務所のホームページへのご訪問、ありがとうございます。
茂木会計事務所の園木です。
今回は平成30年度税制改正により見直された、いわゆる『特定居住用宅地等の家なき子特例』と『貸付事業用宅地等』についてお話をしたいと思います。尚、本改正は平成30年4月1日以後の相続から適用になります。
〇そもそも小規模宅地等とは?
小規模宅地等の特例とは、被相続人等が居住していた宅地や事業の用に使っていた一定の要件を満たす宅地について、相続税の計算上、その宅地の評価額からその評価額の80%又は50%を減額してくれる制度です。
小規模宅地等は下記の4つの区分に分けられるのですが、そのうち④の貸付事業用宅地等は50%の減額割合で、その他の減額割合は80%となります。
①特定事業用宅地等
②特定居住用宅地等
③特定同族会社事業用宅地等
④貸付事業用宅地等
例えば、1億円の宅地が特定居住用宅地等に該当する場合には2,000万円まで評価額を下げることができるということになりますので、本特例が適用できるか否かというのは、相続税の計算上、非常に影響の大きなポイントになります。
〇特定居住用宅地等の適用要件について
被相続人または被相続人と生計を一にしていた親族(以下、「同一生計親族」といいます)の居住の用に供されていた宅地で次の要件を満たすものが、特定居住用宅地等になります。
① 被相続人の配偶者が取得すれば、無条件で適用できます。
② 被相続人と同居していた親族、または、別居の場合でも同一生計親族であ
れば、相続税の申告期限まで引き続き、その宅地を有し、かつ、居住の用
に供している場合には適用できます。
※今回の改正で影響を受けるのは次の③に該当する別居親族の場合です。
③ 被相続人の別居親族で、相続税の申告期限まで引き続きその宅地を有し、
かつ以下の要件を満たす親族です。
イ. 被相続人に配偶者や同居の法定相続人がいないこと。
ロ. その別居親族が相続開始前3年以内に日本国内(国外は大丈夫)にある、
「自己又は自己の配偶者」及び「3親等内の親族」「その別居親族と特別
の関係のある一定の同族会社」の所有する家屋に居住したことがないこ
と。
ハ. その別居親族が相続開始時において居住していた家屋を相続以前に所
有したことがないこと。
改正前と改正後とでの違いは、ロの「3親等内の親族」「その別居親族と特別の関係のある一定の同族会社」とハの要件が追加されたことです。つまり「3親等内の親族」や「その別居親族と特別の関係のある一定の同族会社」の所有する家屋に住んでいたり、自己の所有していた家屋を相続開始前に処分しても適用を受けられなくなったということです。
ただし、納税者不利の改正であることから、平成30年3月31日時点において改正前の「家なき子」の要件を満たしている場合には平成32年3月31日までに開始した相続に限り、改正前の特定居住用宅地等の規定の適用が認められています。
〇貸付事業用宅地等の適用要件について
被相続人または同一生計親族の不動産貸付事業用に供されていた宅地で次の要件を全て満たすものが貸付事業用宅地等になります。
① その宅地を取得した親族が相続税の申告期限まで、引き続きその宅地を所
有し、かつ、引き続きその不動産貸付事業を行っていること。
※今回の改正で下記②の要件が追加されました。
② 相続開始前3年以内に貸付事業の用に供されたものでないこと(事業的規模
であれば3年以内でも適用可能)。
今回の改正があるまでは、相続対策として相続開始の間際に貸付事業の用に供することで、貸付事業用宅地等の適用を受けて相続税を節税する方法を取る納税者の方もいたそうですが、今後はそのような相続対策はできなくなったということです。
尚、こちらの改正も平成30年4月1日以後に開始した相続からの適用になり、同日より前から賃貸している物件には今回の改正の影響はありません。
〇まとめ
今回の改正はもとより、相続間際でできる対策というのは限られており、より早い時期からの相続対策が有効であると感じます。
また、制度を運用していく中で、資産税に限らず様々な改正が今後予想されます。関係するお客様には随時、情報提供をしていきたいと思います。
最後まで読んで頂いて、ありがとうございました。
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