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税務ブログ

2017年10月17日 火曜日

退職金支給に関する注意点②

ご訪問頂きありがとうございます。

10月も中旬。急に寒くなってきましたね。
皆様、風邪など引かないよう、お気を付け下さい。
私は先週引いてしまいましたが、今は治って元気です^^;
健康第一ですね!

さて、今回は前回の記事で説明させて頂いた『退職金支給に関する注意点』についての続きのお話です。
前回は、
①退職金は税務上優遇されていること。
②退職金による節税のケース。
③節税には制限があること。
について、簡単に説明させて頂きました。
今回は③の『制限』がかかるケースというのはどのようなケースがあるのか説明させて頂きます。
尚、ここでいう『制限』とは『退職金を支給しても税務上優遇されない』という意味ですので、それを前提にお読み頂けたらと思います。

・退職『年金』とされるケース
このケースに該当するのは、合理的な理由がないにもかかわらず、退職金を分割払いで支給するケースです。
分割払いの場合は、退職『年金』として取り扱われることがあり、その場合、所得税・住民税の計算上は退職所得ではなく雑所得として取り扱われ、また、法人税の計算上は総額を未払計上していた場合であっても、実際に支給された分の金額しか経費として認められません。
せっかく税務上の優遇を受けることを前提として退職金を支給したのに思わぬところで税務署から否認されてしまっては大変です。
分割払いで支給すると必ず否認されるというわけではありませんが、分割で退職金を支給する場合には、一括支給ができない合理的理由(資金繰りに問題があるなど)や退職金の総額を株主総会議事録に記載するなど、利益操作のための退職金計上ではないという証拠を残すことが大事になってきます。

・退職金額が不相当に高額であるとされるケース
大前提として、法人税の計算上、役員に対する給与や退職金については不相当に高額な部分の金額は経費に算入することができないこととなっています。
退職金が不相当に高額かどうかの判定基準については明確な根拠法令はなく、税務署と裁判になるケースも多いのですが、一般的に下記の算式で算出された金額を超えるかどうかが一つ大事な判定基準となっています。
そのため支給金額を検討する際は、下記の算式により算出された金額と前回の記事で説明した退職所得控除額、そして会社の資金繰りなどの状況とのバランスを見ながら行うことが多いです。
≪算式≫
退職時の報酬月額×勤続年数×功績倍率(※)
※功績倍率は役職によって異なり、一般的には2倍~3倍として計算することが多いです。
尚、過大とされた場合であっても退職金をもらった人の所得税・住民税の計算上は退職所得として取り扱われます。

・分掌変更による退職金が否認されるケース
該当するのは代表取締役や取締役であった方が、一度退任したタイミングで退職金を支給し、その後も身分を平取締役や監査役などに変更して引き続き在職するケースです。
このケースについては、引き続き在職しているため形式的には退職とは言えないものの『実質的に退職』したのと同様と認められれば、支給された退職金について税務上の優遇が受けられます。
逆に言うと、『実質的に退職』したと認められなければ、法人税の計算上は経費に算入できないこととなります。
この場合、所得税・住民税については取扱いが微妙なところで、退職所得と認められるケースと給与所得とされてしまうケースの両方が想定されます。
尚、『実質的に退職』と認められるかどうかの判定は下記の基準を満たすかどうかによります。

①常勤役員が非常勤役員(経営上主要な地位を占めている場合はNG)
②取締役が監査役(経営上主要な地位を占めている場合はNG)
③分掌変更等の後におけるその役員の給与が激減(おおむね50%以上の減少)したこと。

また、分掌変更による退職金については原則として未払計上を認めないというのが税務署の考え方となっています。
よって、税務署から言わせれば退職金の支給が確定した期に全額支給するべきということになります(未払計上が恣意的ではないと認められる場合については未払計上をしていても経費として認められるケースもありますが、否認されるリスクは低くないと思われます)。

以上、前回・今回と2回に渡って退職金支給に関する注意点について説明させて頂きました。
退職金に関する税務は複雑、かつ、曖昧で、現行の法律に関しては疑義を抱かざるを得えないというのが個人的な考えです。
法律が曖昧であるために税務署と納税者の裁判が多発しているのです・・・
しかし、過去の裁判の判例等を頼りにリスクの有無を判断することは可能です。
退職金の支給を検討される際には、この記事をご参考にして頂くとともに、不明な点や不安な点などございましたら、まずはご相談頂けたらと思います。
ではでは、最後までお読み頂きありがとうございました。

投稿者 税理士法人茂木会計事務所