税務ブログ
2018年10月18日 木曜日
民法(相続法)の改正について
こんにちは!
茂木会計事務所の高橋です。
ようやく、秋らしくなってきましたね。
今年は夏の暑さが長く続いたため夏バテから完全復活する前に秋バテになってしまう人が増えるのではないか。と今朝のテレビでやっておりました。
秋バテになると疲れやすく、ボーっとしてしまったりするそうです。
秋バテの原因は身体の冷えであるため、暖かい服装・ホットドリンク・しょうがや唐辛子などの身体を温める食べ物が良いとのことでした。
さて、今回は民法(相続法)の改正についてです。
被相続人の配偶者の居住権の保護であったり、遺留分の算定方法の見直しであったり、大きな改正が今年の7月に成立・公布されました。
施行は現時点ではまだされていませんが、来年、再来年までには施行される予定です。
今回の改正により、遺産分割に対する考え方や相続税の計算についても影響が生じることになりますので、我々も注目している改正です。
今回は新設される配偶者の居住権について、ざっくりと言葉の定義を中心にご説明させて頂きます。
1.配偶者短期居住権
被相続人の配偶者が相続開始時(被相続人が亡くなった時)に被相続人の建物に無償で住んでいた場合には、以下の期間はその建物を無償で使用する権利(配偶者短期居住権)を取得することになります。つまり、そのまま無償で住んで良いというですね。
①配偶者がその建物の遺産分割に関与するときは、その建物が誰に相続されるかが確定する日までの間(ただし、最低6カ月間は保障されます)。
②その建物が第三者に遺贈(遺言による承継のこと)された場合や、配偶者が相続放棄をした場合にはその建物の所有者から退去を求められてから6か月
改正の趣旨は相続発生後の配偶者の生活の保護ですね。
現行法では、夫が亡くなった場合(相続人は妻と子とします)に、遺産分割がすぐに完了しない場合や、子が妻の居住している建物を相続したケースでは、子が妻をその建物から追い出そうとしたり、賃料を請求したりすることができます。
この場合において、最低限の期間については妻の居住権を保護しようとするものが上記の①です。
また、夫が愛人に、妻と居住していた建物を遺贈したりしてしまうと、子が相続した場合と同様に、愛人が妻を追い出そうとしたり、賃料を請求されたりする危険性があります。
この場合の妻の居住権の保護を図ったものが上記の②です。
2.配偶者居住権
配偶者居住権も配偶者が相続開始時に無償で住んでいた建物を、相続後も引き続き無償で使用する権利が与えられる点については、配偶者『短期』居住権と変わりませんが、以下の点で大きく異なります。
①配偶者居住権は所有者と配偶者との間で定めた存続期間中(存続期間を別途定めない場合には配偶者が死亡するまでの間)権利が保護されます。一方、配偶者短期居住権は最低6か月など短期間のみです。
②配偶者居住権は、登記義務があります。そのため、所有者が変更されても配偶者居住権はその新たな所有者に対抗(権利を主張)することができます。
③配偶者居住権は財産評価の対象となります(つまり相続税が課税されます)。
(注)ただし、評価方法はまだ定まっていません。
こちらの改正の趣旨は、相続発生後における配偶者の生活の保護である点は配偶者『短期』居住権と同じなのですが、配偶者『短期』居住権は、まさに住む権利が保護されるのに対して、配偶者居住権は相続後の資金的な保護を目的としています。
具体例を読んで頂くとわかりやすいかもしれません。
〇具体例
被相続人の財産⇒自宅(妻と同居、子は別居)2,500万円と預貯金2,500万円
相続人⇒妻と子(1人)
相続分⇒妻:子=1:1(妻2,500万円 子2,500万円)
・現行法の場合
妻は住む場所を確保するために自宅を相続したいと普通考えますが、自宅を相続してしまうと、下記のように相続できる預貯金(現金)が0円ということになります。
相続税は自分の預金から払わなければなりませんし、そもそも被相続人の預貯金は妻との共同生活によって蓄えられたものと考えるべきものであるにもかかわらず、一銭も妻は手にすることができないという事態に陥ります。
自宅は確保できたものの相続後の生活が厳しいものになる可能性が高いことは明らかです。
妻⇒自宅2,500万円(現金が相続できない・・・)
子⇒預貯金2,500万円
・配偶者居住権を活用した場合
配偶者居住権の財産評価額が1,500万円だったとすると、下記のような遺産分割が可能になります。
妻⇒配偶者居住権1,500万円+預貯金1,000万円
子⇒自宅所有権1,000万円(※)+預貯金1,500万円
※配偶者居住権+自宅所有権=自宅の評価額となります。
よって、相続税は相続した預貯金から支払うことができ、相続後の生活資金も一定額は確保できるという状況に改善されるということとなります。
3.まとめ
今回の民法(相続法)の改正は、配偶者の居住権以外にもいくつか重要な改正があります。
また機会を見て、ご説明できたらと思います。
最後まで、お読み頂きありがとうございました。
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